中級編2 着物の柄2 柄に上下をなくす理由

  • 着物は袖山、肩山で縫い目がありません。もし一方方向の柄しか描いていない時は 袖山と肩山を境に上を向く柄と下を向く柄ができてしまいます。
  • 世の中 方向のある物はたくさんありますが、着物の構造上、後側の柄を上に向かせれば、前側は下を向きます。この事がわかっているので、柄の配置は向きをそろえないで描く場合が多いのです。

着物は肩の部分で縫込みがありません

柄が一方方向だと 逆さ向いた方はずべてさかさまになってしまう。


向がある柄だった場合

もしも一方方向に柄描いていて、柄方向がよくわかるような時には 袖一枚だけ反対向きとか身頃片方だけ反対向きという配置にはしません。

柄が一方方向だった時

身頃が一枚だけ逆むき

上のように よくわかるような柄の時は混在させます。その方が前からも後からも公平になるので 違和感がありません。

全体でまんべんなく柄の上下があるようにする
後ろ側を木の生える方向にそろえておきます。前身頃の木は下をむきますが、 衽や衿が上を向くように仕立てる場合もあります。

 

衿と衽について

  • 衿と衽は同じ生地をだいたい半分に分けて使います。反物の柄によって、衿と衽の柄が異なる場合があります。衽の柄の方が派手にするのが一般的です。
  • 例えば一方が無地で、もう一方に柄がある時は、柄のある方を衽、衿を無地にします。衿の部分というのはすっきりしている方がいいのです。
  • 短大の先生がちょっと乱暴ないいかたですが「立派な顔があるのだから衿はすっきりさせなさい。顔を見られたくないなら衿に目がいくようにごちゃごちゃさせなさい。」と説明されました。
  • このようなことも多くの着物をみていると自然に納得できてくるので不思議です。

中級編3 紋

紋の歴史

◎ 紋の起源は 平安時代に公家の間で牛車の標識を付けた事がはじまりで, 家の紋として代々受け継ぐようになりました。
◎ 武家社会になると戦(いくさ)の敵味方を区別する為に紋をつけるようになります。
◎ 江戸時代には庶民にも広まります。町火消しや職人などが紋を付けた半纏(はんてん)を着ます。歌舞伎役者の紋が人気を呼んだりもしました。
◎ 古墳などの遺跡の出土品の中にはシンボルが描かれているのでもっと昔からあったと考えてもいいかもしれません。


紋の数と格

◎ 日本にはたくさんの氏名がありますが 家紋も何千種類あります。種類が多すぎて呉服屋さんによっては紋の係がいる店もあります。
◎ 着物では長着と羽織に紋を入れます。
◎ 紋の入れ方は決まっていて五つ紋が最上格です。次に 三つ紋 一つ紋 となります。
◎ 男性と女性では紋の大きさが異なります。女性の紋は5分(約2cm)の直径の丸に入る大きさ。男性の紋は1寸(約3.8cm)の直径の丸に入る大きさ。
◎ 女性の羽織は礼装として一つ紋か三つ紋を入れるのが一般的で 五つ紋にはあまりしないようです。紋の数と名前と位置


紋の風習

◎ 女性が結婚時に嫁入り仕度として喪服などの着物に紋をいれるとします。男の紋は家を表し 女の紋は血筋を表すとして母親の紋を入れる風習がある地域もあるようです。特に紋に頓着せず 家の紋もよくわからない人は桐の紋を入れます。誰が考えたのか?桐は誰でも使える紋ということになっています。家の紋を入れるのではなく おしゃれ紋といってオリジナルの紋を入れることもできます。紋章上絵師のお仕事をご覧になりたい方は「紋匠堀川」さんで詳しく紹介されています。


紋についてのちょっと話

◎ 誰もが自分の紋を知っているわけではありません。紋名を着物に染めるわけではないので 柄があっていればいいのですが、時にはやっかいなことがおきます。
◎ 家紋帳というのはいろいろあるのです。家紋帳によって柄が同じなのに紋名が異なっていたりします。全部が違うわけではなく何かが少し違うのです。このような事があるので必ず柄を確認する必要があります。もしかしたら印刷時の間違いかもしれませんが・・・。
◎ 紋に自信がないので墓石の紋を見てほしいといわれた事があります。残念ながら墓石の紋が正確とは限りません。大きな墓石なら彫りやすいかもれませんが・・・。
◎ 嫁入り道具に紋を入れるのは 離婚する時に女性の持ち物である事を証明するためでした。封建時代でも妻の持ち物をかってに夫が自由にすることは違法でした。夫婦は異なる紋でいいわけです。
◎ 呉服屋さんの持っている家紋帳はたくさんの紋が掲載されています。そこそこのお値段がするのですが、たまにお客様の方で調べたいとの理由で家紋帳を預けたりします。ところがいろいろしているうちにお客様に預けたままになってしまうこともあるそうです。家紋帳はただではありませんので、返してあげてください。

中級編3 紋の種類

表紋(日向紋) かげ紋(日かげ紋) 染め紋 切り付き紋(江戸付き紋) ぬい紋 絞り紋 などの種類があります。そのほか 特殊な紋として伊達紋 加賀紋 比翼紋などがあります。当サイトでは文様のコーナーで少ないですが、紋を紹介しています。

紋の位置と寸法

  • それぞれの紋の位置は着物の種類に関係なく同じです。長襦袢に紋を入れる人はいないと思いますが長着も羽織もコートも同じ位置です。
  • 子供物の一つ身、四つ身は大人より体格が小さくなるのでその分少し変わるだけです。
  • 肩山、袖山、掛け衿の下からの位置がそれそれ起点になります。
  • 紋の大きさは男女で違いはありますが、一枚の着物にすべて同じ大きさの紋をいれます。
  • 男物は背紋と袖紋の高さはほとんど同じ高さになります。
  • 女性の場合 出来上がり繰越巾によっては背紋が袖紋より下の位置にくる場合もあります。

大人の紋の位置

名称 本裁ち男女 四つ身 一つ身
背紋下がり 衿付より1寸5分(5.7センチ) 1寸3分 1寸
袖紋下がり 袖山より2寸(7.5センチ) 1寸7分 1寸5分
抱紋下がり 肩山より4寸(15センチ) 3寸5分 3寸

紋入れを入れる前に

  • 紋は一つ紋でも最低二つは入れます。背は縫い目があるので、右後身頃と左身頃に一つずつ入れる必要があります。(背縫いがない場合は一つになります。)
  • 紋章というお仕事をする人もいろいろです。昔はすべて手描きでした。最近は 型を使う方法が多いです。手描きと型では型の方が少し安くなります。型ではしていないという紋章業者さんもいらっしゃるかもしれません。
  • 一般的には呉服屋さんをとおして注文する事になります。

縫い紋の種類

  • 縫い紋にはステッチの違いで けし縫い すが縫い まつい縫い こま縫い さがら縫いがあります。
  • 業者さんによって名称に若干の違いもあるようです。
  • 縫い紋の色やステッチはご自身で希望をいうことができます。値段も違いがあります。
  • 一般的には地色と全く同じにすると紋があるかどうかわからないので同色にはしません。
  • 着物の地色より濃い色や反対色などいろいろです。
  • 最近はミシンの縫い紋が多くなってきました。ミシンの縫い紋はかたくなります。手縫いの方が生地になじんでいいのですが、料金の安いミシン縫いに技術がどんどん良くなっているのが現状です。
  • 危惧するのは 手縫いの紋の技術者がいなくなることです。

日向紋と陰紋

上記は三つとも「二引き」の紋です。向かって左から日向紋、日陰紋、縫い紋です。武士の第一正装は裃です。裃には日向紋をいれますが、武士が公務ではなく私的に外出する時には日陰紋を入れた羽織を着たりしました。このようにTPOに応じて紋の使い分けをしたのです。もちろん町人も同じです。紋の種類


石持(こくもち)について

石持ち黒留袖や喪服や黒紋付は紋をいれる所を白い丸にして地色を染めません。これを石持と呼びます。石持になっていない所に日向紋などをいれようとすると一度生地の地の色を白に変えなければなりませんがその時の技法を染め抜き紋といいます。濃い色や染色の方法などで上手く日向紋が入れられないときがあります。このような場合は縫い紋にする方が無難です。