中級編9 比翼概要

比翼とは

基礎編6で着物を重ねて着る風俗習慣を説明しました。昔は長着をかさねて着ていましたが これはかなりの重ね着になります。そこで下着の見える部分だけを残した着物が考案されました。これが比翼です


比翼の名前の由来

比翼という伝説上の鳥から名づけられたとどんな本にもあります。この鳥は雌雄が一翼一目でつねに一体となって飛ぶということからかさねた着物が対になって離れないという事を表現したようです。


比翼の種類 仕立て方の違い

  • 本比翼 上着の裏と比翼の表をとつなげて仕立てる方法
  • 付け比翼 上着と比翼別々に縫ってその後上着の裏に比翼を付ける方法

本比翼の方が仕立てるのは難しいです。簡単に取りはずせないので付け比翼がほとんどです。御服屋おかみも本比翼仕立てをした経験はありません。

比翼用の生地

比翼は下着の代用品です。下着というのは肌着という意味ではありません。ちゃんとした表着ですので 本来は白羽二重や白縮緬を使うのですが、かなりの重ね着になってしまいます。裏地で使うような生地を比翼にすることもめずらしくなくなりました。


単衣付け比翼について

季節が6月から9月は単衣を着ます。7月8月は絽を着ます。経済的理由と冷房完備が備わっているので 貸衣装でも単衣を着る季節でも袷を着るのが現実です。(個人的には貸衣装屋が単衣の季節なのに 袷を貸す仕事で許されるのがおかしいと思っています。)
単衣の留袖や絽の留袖では比翼の仕立ても単衣になります。袷の比翼と単衣の比翼で大きく違うのは身頃の丈です。袷では裾回し丈より少し長ければすみますが、単衣になるとそれでは上着の膝辺りに比翼をつけることになります。単衣の比翼は上着の衿下より長く作ります。美容室で聞いた話ですが、仲人をされた方が絽の黒留袖を着たら写真屋さんに白くうつるので衣裳を替えて下さいといわれたそうです。この写真屋さんは残念な事に着物を知らない人だと思います。絽は透けていますので袷の黒留袖とは違います。白くうつるのは当たり前です。正しい事をしている人が結果的に周囲に気をつかい、迷惑をかける時代になるとは悲しいことです。写真屋さんはときどき方向も間違います。正しく右前に着ているのにできた写真が左前だったりします。写真屋さんに負けないようになりましょう。


最低限の付け比翼

最低限の比翼 衿と上前衽のみ
夏場や冬場でも軽くしたい時には身頃につける比翼を衿と上前衽だけにするという方法があります。経済的にも安くできます。振袖もこの方法で二枚襲ねに見せたりします。留袖では白色ですが振袖では色ものにします。上着が絽などの薄物の時で白色以外の比翼にする時はこのタイプはできません。上着と比翼が重なった所と重なっていない所が異なる色合いになります。
留袖の場合 身頃に衿と上前衽だけにしても お袖には比翼をつけます。お袖の比翼は次のページに掲載しています

中級編9 付け比翼

付け比翼

現在一番一般的な黒留袖の付け比翼について説明します。比翼の寸法は上着の寸法から割り出します。従って上着を仕立ててから比翼を縫います。
付け比翼には大きく分けると袖に袖口布と振り口布を付けるタイプと下着袖(まる袖)といって上着の袖を少し小さくした袖を作るタイプがあります。身頃に付ける比翼も生地の丈によって少々裁ち方と布の使い方が異なりますが上着の裾回しになる部分と衿の部分に比翼が付きます。見た目を綺麗にするために上着の裾回し丈よりも長く仕立てます。
比翼は上着から出ないように付けます。従って 着た時に裾から比翼がでているような時は付け直ししないといけません。
現在は袖口と振り口をつける方が多数派だと思います。比翼の形は呉服屋さんの方針で決まる事が多く、それぞれの地域によって差があると思われます。昔は喪服も比翼をつけましたが不幸がかさなるといわれてつけなくなりましたが、どちらかといえば経済的な事が理由ではないかと思います。

比翼をつける前の黒留袖

比翼をつける前の長着

比翼をつけたところ

比翼をつけた場合


付け比翼の構造

身頃部分

黒留袖の比翼は表裏両方共布で白色です。わかりやすいように表をピンク、裏をブルーに色分けます。比翼は表側が上着の裏と接する部分になります。着る時には裏側の方が目に付くので、生地の難がある時には表側にします。これは通常の着物と異なる点です。下着を着ているように見せるのが目的なので着た時に見える部分は同じ形です。袖口や裾や振り口には「ふき」を作ります。衿は地衿をつまんだだけの掛け衿もあります。その他は図をご参考にしてください。袷の比翼で3丈から3丈2尺あれば作れます。

比翼の構造表側
↓ 衿の裏側の生地が比翼生地を使う
比翼の構造裏側 その1
↓ 衿の裏側の生地を衿先が比翼生地 その他は胴裏を使う
比翼の構造 裏側からその2
↓ 表側からみた比翼 赤ラインが長着につける部分
表側からみた比翼 赤ラインが長着につける部分


袖について

下着袖

上着の袖と形はほぼ同じです。袖付のところだけが少しちがいます。表側を下着の寸法にして裏側は少し出して絎けます。裏側から見た時に縫い付けている部分を見せないようにするためです。袖口の留の仕方も袖底の縫込みも上着の袖と同じです。

比翼 下着袖

振り口布と袖口布

赤い線の所で上着の胴裏部分に縫い付けます。上着の袖口と振り口から比翼がでないように付けます。振り口布の巾は比翼生地の丈によりいろいろです。並巾の半分が一番大きい巾になります。

袖口布 と振り口に分かれている