和裁で使う道具
電気鏝

アイロンの日本版と考えていいと思います。洋服でも同じですが服を綺麗に縫う為には一箇所縫い終われば鏝(こて))を使って縫い目を割ったりきせをかけたりします。電気鏝(でんきごて)は釜と鏝(こて)に分かれます。釜の上部に鏝(こて)をさしこむ口があります。釜が熱くなると鏝(こて)も同時に熱くなるというしくみです。この釜は製造中止になりました。新潟地震によって図面がなくなったそうです。現在は他のメーカーの物が売っています。鏝先がスリムになるので併用はできません。
釜

釜には1本用と2本用と4本用があるようです。こちらは2本用です。は簡単に壊れる物ではありません、電気コードの方が寿命が短いです。電気コードはさめてから巻くようにしましょう。上の左側の写真は電気コードの差込口の方から写しています。
鏝(コテ)

上記の写真は鏝(こて)をさして上から見た時の写真、釜についている温度調節部位が見える写真。大きな電気屋さんに行くと鏝(こて)に電気コードが付いたタイプの物が売っていますが、コードや温度調節の部分がじゃまなので使いません。鏝(こて)さきが尖った物と丸みのある物があります。布に印を付る時もあるので丸い方を使っています。
左記の写真が鏝(こて)の写真 鏝さきと木柄に分かれる。
私の卒業した学校は鏝(こて)の柄付けを自分でするという数少ない学校でした。それで和裁士ですが時には鍛冶屋さんに変身します。これをいれる方法は聞けば理解はできますがやるのには勇気と集中力が必要になります。職人は道具から自分で作るといいますが和裁士になって鍛冶屋さんのような事をするとは思いもしませんでした。市販の物を使ったことがないのですが、持つ手は市販のものより熱くなると思います。慣れれば全く問題はありません。
和裁士の利き手の手のひら

鏝を握るので利き手には和裁士特有の「まめ」というか「たこ」ができます。この位置にまめがない人は鏝(こて)をちゃんと握っていないか、たくさんの仕事をしていないかです。できる場所は小指や薬指の付け根の所、手相で感情線というのがありますがその感情線のすぐ上にできます。
ラシャ鋏

私は右利きなので右利き用のラシャ鋏を持っています。手を入れる部分は共通していますが 22cm、24cm、26cmの三種類があると思います。手芸屋さんには24cmが一番よく置いてあります。刃物専門店には22cm、26cmも置いてあります。ラシャ鋏の先端が尖りすぎているものはよくありません。布がひっかかるからです。微妙な部分ですので先端が使いにくい時は研ぎ士に変身し自分で丸く研いだりします。
写真の左が22cm 「有次」 右が26cm「京都常久」です。
ラシャ鋏の由来は羅紗という生地を裁つためのはさみからと思います。



ラシャ鋏は微妙な角度のあるはさみです。左利きの人が右利き用のラシャ鋏を左手で持って裁つのになれてしまうと上記の左の刃の向きのラシャ鋏は使いにくくなるそうです。それで右利き用の刃の向きで持つ手が左利き用になっているラシャ鋏というものを専門店で購入するそうです。
にぎり鋏
にぎりばさみはいろいろなタイプがあります。大きさも巾もいろいろです。私は細いタイプと普通巾と二つ持っています。にぎりばさみも使っていると切れ味が悪くなります。にぎりばさみはそのままでは研げません。U型になっているところを伸ばしてから研ぎます。従ってにぎる所に何かが巻いてあったりプラスチックで囲んでいたりすると研げません。私の場合、にぎる部分をバイアステープの一番細くて接着剤なしのを買って来て巻いています。年月がたつと手垢や自然な汚れがついてバイアステープが黒くなるので取りかえます。

にぎりはさみで写真のようなタイプの物は他人に貸したりしてはいけません。 このはさみは個々の力の入れ具合をおぼえるくせがあります。他人に貸すと貸した人の力加減をおぼえます。完璧におぼえた後に返されると元にもどりにくくなり繰り返している内に切れなくなってしまいます。
二枚の写真の向かって右側のはさみは京都の錦市場の東端にお店がある「有次」のにぎりはさみの細口のものです。このにぎりはさみはとても切れ味がよく、ジョキジョキきれるはさみです。お値段もそこそこしますがだすだけの値打ちはあると思います。
左のようなタイプならば共有しても切りにくくなるということは少ないのではないかと思います。
ゆびぬき
プロ使用の指貫。鹿皮だそうですが、自分で好みの大きさにカットして使います。和裁では金属製の指貫は使いません。(好みで使う人もいるかもしれませんが・・・)利き手の中指に普通はつけます。中指を怪我して臨時に薬指に指貫をして仕事をした人もいます。
市販の指皮、プラスチックで補強していたり、針のあたる位置を作ってくれています。こちらでも指の太さにあわせてカットして使います。
短大の先生が運針は世界に誇れる文化で、この位置に指貫をいれて裁縫することで手縫いの技術がすばらしいものになったと説明しておられました。ミシンがいくら発達しても手縫いにはおいつけない技術があります。それを習得するには何年もかかります。
この指貫は人にもよりますが穴が空くと捨てるしかありません。消耗品ですね。指貫に針があたる位置が人によって違います。指貫のど真ん中に必ず針があたる人は寿命が短いです。少し右によったり左によったりする人は一方に穴が空いたら逆さまにいれて使い少しは長持ちさせることができます。
針
私は針を布地によって小まめに変えるというタイプではありません。使っているのは手縫い針の中の絹針「四の二」と「四の四」、ガス針の「三の二」です。「○の△」の○は針の太さを表し、数字が大きくなると細くなります。△は針の長さを表し、数字が大きくなると長くなります。針の頭に飾りのついた待ち針は出来上がった着物に針が入っていた時にほどかないとぬけなくなるので使いません。
新しい針を使う時には機械油がついたままの針もありますので、布で拭いてから使うようにします。

昔 祖母から良い針は折れると聞きました。すべてのお店の針を試したわけではありませんが確かに良い針は曲がるよりも折れます。左記の写真は京都の「三條本家みすや針」のパッケージです。このお店の針は独特な輝きがあります。そして確かに縫いやすいです。針も指貫と同じように消耗品ですが、よい針を使うと布を傷めることも少ないのだろうと思っています。HPにはもっと詳しく針の説明がありますのでお知りになりたい方はご覧下さい。
袖の丸み
袖の丸みを綺麗に作る為の型の事をいいます。4寸、3寸5分、2寸、1寸、8分、5分、2分、3分といった大きさがあります。お客様がリクエストした寸法がないときにはボール紙などで作ります。キンカメの丸みは純ファイバー・手作りということですが、確かに手になじんで仕事がしやすいです。写真は打掛け用の丸みでカレーパンまんの顔の形ににています。キンカメは買ったお店では現在取り扱っていません。
チャコと石鹸
和服を縫う時はあまり糸印はしません。チャコを使う方が多いです。チャコには白、青、赤、黄の四色があります。和服は縫った後に洗うということをしません。チャコの印はしっかりつけてしまうと消えなくなります。両面使える織物でもチャコの後が残れば結局使えなくなると思うのです。これは洗い張りの着物の仕立てをした経験から思ったことで、大きな印で青や黄のチャコを使って仕立てられている着物があります。裏だということからなのかチャコの線まで悉皆屋さんは消してくれません。(ほんとに取れないのかもしれません。)結局、白のチャコのみ使用することに決めました。裏が白い時は役にたたないので印だけを頼りに縫う時もあります。布の地の目のいがみが少なければ直線縫いなので縫えます。
布の中にはかたくて縫えないような物があります。そういう時には乾燥させた石鹸を塗ってすべるようにしたりするのですが、この石鹸も塗った後に洗うわけではないのでついたままになってしまいます。それで、どんなにかたくても石鹸は使用しないで頑張ることにしています。そのかわり指貫を貫通して皮膚に穴があくこともあります。これではいけないので指貫を二枚重ねして対応しています。
へら
布に印を付ける為の道具
写真の右側が一般的な手芸屋さんで入手できるへらです。左側が私が使用しているへらです。どちらも象牙でできています。プラスチックのものは軽くて使いにくいです。力を入れるとすぐ折れてしまうような気がします。象牙でも欠けたり、割れたりするときがあるので丈夫というわけではありません。左側は大きいので力はいれやすいです。
リンク集に紹介した道具が買えるお店が掲載されています。

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