上級編2 裏打ち 

ハゴロモギク属

裏打ちとは

総絞りの生地が仕立てたあとに伸びたり、縮んだりしないようにする作業です。

総絞りの着物は展示する時 出来上がりがわかるようにしている時もありますが、
絞った糸を取り除いた状態で展示したりする場合もあります。下の写真のように 絞った糸は取り除いて 巾だしはしないで、縮んだままで 仮絵羽にして店頭に展示することもあります。下の写真は仮絵羽の総絞り羽織です。総絞りの羽織 絞った糸をとった状態で羽織の仮絵羽にした

次に 下の写真は 仮絵羽の羽織と白地の羽織は重ねてみました。白地の羽織は身長155センチぐらいの女物の羽織です。仮絵羽の総絞りの羽織がとても小さい事がわかります。

総絞りの羽織 絞った糸をとった状態で羽織の仮絵羽にした

仮絵羽の総絞り羽織をほどいた状態

仮絵羽をほどいて パーツごとに置いてみました。
向かって左から袖 右身頃 衿 左身頃 袖と並べています。袖は全形を撮っていますが、身頃と衿はは半分の丈に折って撮っています。
衿の生地半分が絞っていませんが、これは衿の芯になる部分なので絞っていません。またこのことで羽織用になっていることがわかります。コートならば衿も全部絞るからです。

仮絵羽の羽織をほどいたところ

生地の巾だし

この小さいままでは仕立てられませんので巾出しをしてもらいます。 お袖の生地の巾を例にとります。写真のように巾出し前の生地巾はものさしの端から端で約16センチになっています。絞りは魚の卵がたくさんあるような感じに見えます。

生地の巾だし前

実はこの羽織 一昔前のものなので、もともとの生地巾が広くありません。並幅に巾出ししたことで 絞りがほぼ倍ぐらいの大きさになっています。絞りを伸ばしすぎると意味がないのですが,、生地巾を広げなければ 必要な寸法に仕立てられません。ということで 疋田絞りはほとんど伸びたようなものになってしまいました。

↓ 「巾だし」 袖の生地

巾だしたあと

裏打ち作業

裏打ちした生地

ゴウス(薄い絹の生地)を絞りの生地の裏側にのせて、斜めに糸で綴じていきます。
ゴウスという名前の由来はわかりません。極々薄い正絹の生地ということから、極薄がゴウスと呼ばれるようになったのかもしれません。呉服屋さんに漢字を聞いても、耳から覚えた言葉だからよくわからんといわれました。

裏打ちは専門にする人がいます。ただ 昔と違って この作業をしてくれる人もだんだんいなくなるのだろうと思います。

完成したの総絞り女物羽織

完成した羽織

これが出来上がりです。

実は 裏打ちをするかしないかが問題になったのです。意見が違うのです。「いらない」「しない」「やる」「やらないといけない」。全く真逆の意見です。こんなに意見が違ったら 結局 お金がかかり 手間がかかるわけで 都合のいいようにしか結論をださなくなってしまうということです。
巾出しをしてもらったお店のご主人は裏打ちをしない派でした。
主人 『今はね 裏打ちしないよ。昔みたいに薄い生地で絞らないし、下手な裏打ちは袋がはいるし困るよ。』
私  『でもこの羽織は新たらしいとはいえません。薄い生地で絞っているんじゃないですか?』
主人『・・・・・・。』

裏打ちをする派の意見は ふくろ がはいることを心配していました。羽織はまだいいのですが、着物は正座をしたり、椅子に座ったり いろいろ行動すればするほど 絞りがつぶれます。つぶればそこが伸びるので 裏打ちをしていないと、表生地が伸びる つまりは ふくろがはいります。それで下半身だけ裏打ちするといったようなことをするお店もあるみたいです。

完成した羽織と 仮絵羽の羽織を比べた写真

完成した羽織と 仮絵羽の羽織を比べた写真

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仕立てる立場からは裏打ちがあった方が仕立てやすいです。伸びたりしないので寸法がくるわないからです。
ふくろについては長襦袢ですが、説明しているのでご覧ください。ページの一番下に説明しています。中級編4 ふくろ >>


私の結論はこれは自分のものだから 他に迷惑がかかるわけではないので、どちらが正しいのか試してみると決めました。
両袖は裏打ちなし、身頃を裏打ちしました。
袖と身頃を比べると 明らかに身頃の方がしっかりした感じなりました。薄いとはいえ生地が重ねられたのです。さて結果はすぐにはでません。何年かして袖と身頃にどのような変化があるのでしょうか?

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