胴裏

胴裏の基本的な説明

    1. 素材
      • 絹と化繊があります。表地が絹ならば裏地も絹を使う方が良いです。表地が絹で裏地を化繊にするとかびの発生を促進する原因ともなります。
      • 広巾と小巾があります。関東では広巾を使い 関西では小巾を使う習慣があります。確かに私は関西ですが 小巾を使う方が多いです。表地では小巾とよばず 「並巾」といいます。裄広い人用に男性はキングサイズ 女性はクイーンサイズがあります。
    2. 長さ
      • 着物一枚分 一疋(着物三枚分)長襦袢用 居敷当用 振袖用または比翼用
    3. 織物
      • 平織 羽二重
        • 平織は縦糸と緯糸を交互に交差させて織った織物です。羽二重よりも品質が落ちます。絹で紅色に染めたものを特に紅絹(もみ)あるいは紅絹裏(もみうら)と呼びます
        • 羽二重は着物の裏地に一番よいとされている織物でくわしくは別のコーナーに設けます。
    4. 男性用胴裏
      • 男性長着では胴裏という名称はあまり使いません。長着では「花色もめん」という綿素材を使います。絹羽二重を使用する人もいますが強度の面で木綿の方がいいです。黒紋付羽二重の着物の場合は白色の胴裏を使用し 裾まわしが別にあります。それ以外は通し裏で色ものを使います。長襦袢は色ものを使用します。今までに男性用長襦袢で白色の胴裏を使った経験がありません。
    5. 女性用胴裏
      • 現在はほとんどの人が白色を使います。表地が薄い色の着物の場合 昔のよう紅絹をつかうとうつってしまいます。胴裏はさまざまな部分で使用しますので白色にしておくの方が使い勝手がいいからです。

ここではウール素材のモスリンについては説明していません。


胴裏の加工の種類

      • 黄ばみ防止
        • 薬剤の処理で糸をコーティングする方法
        • 白色に染める方法
      • 柔軟仕上げ加工
        • なんらかの加工をすると生地がかたくなり、大変な力をいれないと縫えない状態になります。着心地と縫製をしやすくするために柔軟仕上げ加工をします。(縫製よりも手触りの方が重視していますが)
      • 増量加工
        • 絹糸や絹布は重さで取引します。(品質のランクも関係します。)同じ糸で同じ大きさの生地なら軽い方が安くなります。プラスチック樹脂というもので加工するそうです。昔も増量加工はありました。昔の方法では時間の経過と共に黄色になりました。昔の方法で増量加工はしていませんので 増量が原因で黄変色することはないそうです。

加工によって生地が何割か重くなります。消費者にわかりやすい表示の義務はありません。


絹 100%

絹は酸素にさらされると黄色に変色する性質があります。どんなに 白さを保とうとしても限界があります。黄色くなるのはほんまもの絹の証拠です。
人間は外見や雰囲気に流されやすい生き物です。パッケージ包装とかタイトルで購入するのです。
絹製品 特に着物の世界では消費者にもわかる 正しい品質表示はありません。
唯一あるのは 繭から得られる糸つまり絹だけで生地を作れば 絹100% と表示します。
シルク SILK でも法的には問題ないですが 着物の生地では漢字を使っていると思います。
すごーく安いくて ほんとの絹なの?と思ってしまうものほど カタカナとかでかいてあるような気がします。


別織 本場別織 皇室献上品

上記の三つの言葉は胴裏のパッケージによく見られる表示ですが 特別品質の良い物をさしているわけではありません。着物の世界では 「お誂え」「別染め」という言葉をよく使います。既製品ではなく個々の人にあわせて仕立るのでお誂え。ある着物の色が気にいらない時は 白生地を好みの色に染めたりします。こうした行為に「別」という言葉をあてはめて「別誂え」とか「別染め」といいます。
本場は食べ物屋さんで本家とか元祖というのと同じようなもので、本家でも元祖でもお客様がおいしいとおもえばそれでいいのです。本場結城紬のような重要無形文化財もあります。それで胴裏に本場をつけるとなんとなく良物に思えるから売り手が利用しているのです。
皇室献上品を特別に思う必要はありません。献上品がいいかげんとはいいませんが 経験上 胴裏で皇室献上品だからすごく品質が良いと思ったことはありません。

羽二重 (胴裏)

羽二重の織方図

縦糸を二本に緯糸が一本交差する。後練り織物または生絹織物です。つまり生糸を織ってから精錬します。乾式の織り方と湿式の織り方があります。湿式の方が難しいですが 良い羽二重が織れます。緯糸を濡らして織る方法です。強い織物ができるそうです。当然 濡らして織る方が料金的にも高いです。

羽二重の組織図

羽二重の語源 用途 産地

日本の独特の絹織物 古くは帛と呼んでいた。帛という言葉が絹布の意味があるので、絹布の代表でこんな名前で呼んでいた時期もあるということみたいです。羽二重の語源は織機の筬羽(おさば)1羽に縦糸二本通して織ることに由来する。輸出向けと国内向けがある。軽めのものは衣料品だけでなく 絶縁材料にも使用される。産地は年間を通して湿度が高く、その変化が少ない北陸地方が適している。福井県産の胴裏は評価が高く ネット販売でも福井県産の胴裏は高いです。絹織物は明治以降 日本の輸出品として重要な位置にありました。

羽二重の単位
この単位は尺貫法が廃止されてから特例として認められているものです。ほとんどの胴裏にこのような単位の表示はありません。どのような製品でも製造する場合は基準があります。羽二重の場合 匁という単位を使います。真珠も使われているそうですが、国際的にも通用する単位で、カラオケと同じ、日本で使われていた単位が国際的にも通用する。絹が日本の主要産業だった証明です。今はほとんどの人が知りません。
胴裏は14匁 16匁 18匁 という重さのものを使用します。
巾鯨尺1寸×たけ鯨尺6丈の大きさの布が37.5g あると 10匁 精錬後の重さです。
14匁=52g 16匁=60g 18匁=67g 20匁=約74g

織り元さんが羽二重を織るときに使用しています。
メートルになおすと巾約3.7センチ 長さが22.7mが60グラムあると16匁ということです。つまり細くて長ーい生地の単位です。これでは実際にどれだけあるのかわかりません。
小巾は約1尺(37センチ)の巾があります。
一疋の大きさが巾1尺で長さ6丈だとすると16匁では600gあるはずです。
商品によってサイズはいろいろです。一疋の長さは6丈8尺以上はあります。

大雑把に計算してみます。
例えば 品質:絹100% 長さ:25.9m 幅:37cm 目方(重さ):約850g
と掲載されている商品があったのですが
何匁であるかを計算してみてください。大雑把ですが 37センチ×22.7メートル=600グラム で16匁です。丈が3.2m長いだけで(25.9m-22.7m=3.2m)重さが850gあるのです。
着物の胴裏は16匁か14匁を使用します。18匁を使うのはちょっと重いのが好きな方です。20匁は一般の着物には使いません。


こんな胴裏は困る

簡単にほつれる胴裏は選ばない!これが一番大事なことです。

袷長襦袢の背の部分

ほつれる」というと生地の裁ち目部分から縦緯の糸がぬける状態を想像します。生地の織り方にもよりますが 胴裏で簡単に糸がぬけるものはそうありません。他にもほつれる現象があります。
1 縫製時に針の貫通のために糸がスリップ(滑る)する。
2 縫い合わせ部分に力が加わった為に織組織から糸が脱落する こともさします。
またJIS規格では滑脱抵抗力として評価する方法を規定しています。要はすぐ破れるようでは困るのです。縫う時にスリップすると糸の横に細かい線ができます。
2番目の例の写真です。

背縫い 力がかかってスリップしたところを拡大

左の写真は上の長襦袢の黄色囲んだ部分を拡大したものです。背縫い部分がほつれた例です。拡大すると左のようになります。よく着物を着れば生地がわれてきます。特にお尻からひざぐらいの間でおきます。この胴裏は5年間で数回着ただけでこのような状態になったのです。安物の胴裏だったということです。表生地でもおきます。何回も着るとこのようになります。生地がやぶれる前に ほどいて 目われをなおしてもらいます。目われがひどいと、完全に元の生地にはなおりません。なおらない場合は 仕立てでやりくりして 同じ部分を縫わないようにします。できない着物もありますが、前後の身頃を交換したりするのです。

※ 20代に振袖を何回か着たという方は振袖長襦袢のお尻の部分を見てください。居敷当の部分です。振袖は着る期間が10年ぐらいと考えて 上等の胴裏を付けていない場合が多いです。

見分ける方法

耳の部分を横方向に爪を立ててひっぱる。写真のように耳が割れます。買う時に実際に確かめることができるか!! 勇気がある人はできます。お店の人に許しを得てからした方がいいでしょう。内緒でして、その現場を見られたら商品をキズものにしたといわれる可能性もあります。お店の方はしてもらいたくないでしょうね。写真をクリックすると拡大します。
果物で桃がおいしいかどうかを見るのに指で押す人がいますね。押すだけ押して、買わない人もいます。自分以外のお客様のことを考えていない人です。いかんよなぁー。胴裏も同じです。でもお店の人が自信満々でいい胴裏というのならば 少々耳をひっぱってもびくともしないはずです。湿式で製造している羽二重ならばこのようなことはおきないはずです。

耳に爪をたててひっぱる 安価な胴裏は耳がすくにいたむ