中級編5 生地の表裏

表地の裏表の見分け方

  1. 反物に表の判子(はんこ)があれば、そちらが表です。
  2. 「すみうち」が付いている方が表
  3. 生地そのものに「ちりめん」「大島紬」など字が織りこんでいたら読める方が表 。
  4. 綸子は光って光沢のある方が表。
  5. 織物自体に表裏がなくても 染色が濃く 綺麗に染色されている方が表 。
  6. 商標などのシールが貼っている方が表(中には違う時もあるので注意)
  7. 地模様が浮いている方が表。(慣れないとわかりにくい)
  8. 金拍が張っているほうが表 刺繍が綺麗なのが表 。
  9. お客様や呉服屋さんが表と指定した方が表 。
  10. パッケージに入っている反物は色や柄が見やすいように、見えている所が表になっています。長襦袢では外表に二つ折にしてから芯木に巻いている物や途中だけ外表にして芯木に巻いています。

生地に表のはんこがしている方が表

↑ 表のはんこがしている。

文字が織られている場合 読める方が表

↑生地の端に織り方の名称など読める方

模様が浮いている方が表

↑ 柄が浮いている方が表

裏の印

裏のしるしというのもあります。
すみうちは表にします。 生地の耳ではなく 少し中側に無造作にチェックしたような印でレというふうに読めるような印。あるいは ウ と書いてある方。
ウは裏の意味です。この印は薄いのでカメラでは綺麗に写せないので参考にと描いてみました。


両方使える反物

両面使える反物は裏表のない織り方になっている事が必須条件です。 先染め織物は糸を染色し、その後織ります。糸は裏表関係なく染められるので 両面表として使うことができます。生地を織ってから染めるという後染め織物でも 両面共 表として染める反物もあります。片面ずつ異なる柄が染めてある場合もあります。柄が違えば 好みの方を表として使います。
単衣の着物は裏側が見える場合があります。例えば 歩いていると上前衽の裏側が見えます。裏が見えるのは良くないので 裏表の違いがないように染めている場合もあります。


 裏地の表裏について

  • 胴裏
    • 平織の胴裏(一番一般的)は両面使えます。
    • 寿などの字が織り込んであるのは読めるほうが表。
    •  鶴などの柄入りは模様が綺麗な方あるいは浮いている方が表。
  • 八掛け
    •  パッケージに入っているのは見えているところが原則外表。
    •  色の濃い方が表。
    • 留袖 振袖 訪問着などは仮絵羽で 付属している為表地を参考にする。
  • 肩裏
    • 一枚物は見てすぐわかる部分が表になってパッケージされている。
    •  最近はお店では疋で購入する時もあります。(六枚分あります) この場合は芯木に中表で巻いているのが普通。

呉服屋さんの表裏と悉皆屋さんの表裏

裏表は時に厄介なことがあります。お客様にすぐに見てもらえるように表をむけて展示している商品があります。そのほか 芯木に巻いている反物は中表にして汚れないようにしています。 着物には仕立て前にゆのしやゆどおしが必要な反物があります。その作業は悉皆屋さんが担当します。悉皆屋さんを経由して仕立て屋に渡された時は 中表だったり外表だったりして戻ってくるのです。洗い張りの着物は外表が多いです。
仮絵羽や洗い張りの着物を「端縫い」する時に 表裏を混同させて縫い合わせる時があります。ガード加工をするお店が外表にして持ってくる場合があります。仮絵羽になっている着物の中に「すみうち」がない反物も見たことがあります。丁寧な呉服屋さんは悉皆屋さんに出す前に糸印をするお店があります。このような事はたいへんよいことで 仕立て屋としても安心できます。生地の裏表は大切なことなのに 無頓着なお店があるというのは悲しいことです。そして 最終的に裏を表にして縫えば 仕立て直すのは仕立て屋です。

中級編6 色やけ

太陽光線や蛍光灯に長く着物がさらされることによっておきる現象です。絹は耐光性がきわめて低いのです。呉服屋さんは着物を長く光にあてないようにします。商品が店先に一枚もなかったり、風呂敷などの布を被せます。ほこりよけであると同時に光よけです。展示用と割り切った物もあります。 仮絵羽の着物は反物よりも色やけのリスクが大きくなります。仮絵羽の生地を折っている山の部分からおきます。 最初は薄い黄色ですが、進めば進むほど濃い色になっていきます。保存状態が悪いと反物でも色やけはおきます。反物の色やけは気がつきにくいです。
黄色ではなく黒い色になる場合があります。これは光によるものではなく、汚れがついてそこからどんどん黒くなっていくのです。この汚れを取るのも厄介なことなのだそうです。

色やけの見本

見本の写真は木綿の布ですが、色やけ前と色やけした物を並べた写真です。南側の窓に長年おいておいたのでかなりの色やけがおきています。写真の布は5年ぐらいたったころから色やけが目立ってきたように思います。薄い色でも濃い色でも色やけはおきます。ほとんど箱の中にあってお客様に見ていただく時だけぐらいしか 光にあたっていない場合でも 色やけがおきる時があります。
見本の写真をよくみると、小さくてわかりにくいですが、ミシンで周りを縫っています。ミシン糸は化繊です。木綿の生地が色やけしても化繊糸は全く色やけしていません。糸は色やけしにくいみたいです。
色やけを直すことを「すりあわせ」というそうです。高度な技術で 色やけをなおせる人が少なくなっています。

左側いろ焼けした生地 右側 色やけ前


仮絵羽の着物

仮絵羽はいろやけがよくおきる

赤い線が色やけのおきる場所です。最初は経方向におきて 次に横方向におきます。縦方向の色やけはほどいてみてみないとわかりません。袖山や肩山はほどかなくてもわかるので 少し平らにしてみれば発見できる場合があります。ただ 袖山や肩山にまで色やけがあるならば 縦方向にも色やけがあると考えて間違いありません。

実験 冬喪服布の色やけ

写真は2006年2月の最初から2006年9月19日まで南側のベランダに置いていた黒地の絹布です。布の左右を光があたらないようにしておきました。6月ごろに見た時には特に変化はなかったのですが、ひと夏こえると肉眼ではよくわかるぐらいに色やけがおきました。うっすらと「もや」がかかったみたいになっている部分が色やけの部分です。

喪服の黒生地のいろやけ

右の写真は10月24日一ヵ月後の同じ布です。色やけがきつくなっているのがわかります。


呉服店のお店の方角について

北半球の場合は一般的に南向きの土地の方が良いので値段も高くなりますが、呉服屋さんの場合、お店の玄関先に商品を展示するならば南向きや西日が入るのは最悪です。理想は北向きです。
ほとんど商品を陳列していないお店もあります。 反物の色やけ防止という理由があるので ご理解していただきたいですね。ひやかしはしにくいお店です。


購入後に色やけさせないようにするには

虫干しや着た後に風をとおす時に何も考えずに吊るしておけば色やけがおきます。 御服屋おかみ流 着物のお手入れなどの注意点、保存方法を参考にしてください。初級編7 着物の保管とお手入れ方法 >>

初級編7 着物の保管とお手入れ方法 >>

胴裏

胴裏の基本的な説明

    1. 素材
      • 絹と化繊があります。表地が絹ならば裏地も絹を使う方が良いです。表地が絹で裏地を化繊にするとかびの発生を促進する原因ともなります。
      • 広巾と小巾があります。関東では広巾を使い 関西では小巾を使う習慣があります。確かに私は関西ですが 小巾を使う方が多いです。表地では小巾とよばず 「並巾」といいます。裄広い人用に男性はキングサイズ 女性はクイーンサイズがあります。
    2. 長さ
      • 着物一枚分 一疋(着物三枚分)長襦袢用 居敷当用 振袖用または比翼用
    3. 織物
      • 平織 羽二重
        • 平織は縦糸と緯糸を交互に交差させて織った織物です。羽二重よりも品質が落ちます。絹で紅色に染めたものを特に紅絹(もみ)あるいは紅絹裏(もみうら)と呼びます
        • 羽二重は着物の裏地に一番よいとされている織物でくわしくは別のコーナーに設けます。
    4. 男性用胴裏
      • 男性長着では胴裏という名称はあまり使いません。長着では「花色もめん」という綿素材を使います。絹羽二重を使用する人もいますが強度の面で木綿の方がいいです。黒紋付羽二重の着物の場合は白色の胴裏を使用し 裾まわしが別にあります。それ以外は通し裏で色ものを使います。長襦袢は色ものを使用します。今までに男性用長襦袢で白色の胴裏を使った経験がありません。
    5. 女性用胴裏
      • 現在はほとんどの人が白色を使います。表地が薄い色の着物の場合 昔のよう紅絹をつかうとうつってしまいます。胴裏はさまざまな部分で使用しますので白色にしておくの方が使い勝手がいいからです。

ここではウール素材のモスリンについては説明していません。


胴裏の加工の種類

      • 黄ばみ防止
        • 薬剤の処理で糸をコーティングする方法
        • 白色に染める方法
      • 柔軟仕上げ加工
        • なんらかの加工をすると生地がかたくなり、大変な力をいれないと縫えない状態になります。着心地と縫製をしやすくするために柔軟仕上げ加工をします。(縫製よりも手触りの方が重視していますが)
      • 増量加工
        • 絹糸や絹布は重さで取引します。(品質のランクも関係します。)同じ糸で同じ大きさの生地なら軽い方が安くなります。プラスチック樹脂というもので加工するそうです。昔も増量加工はありました。昔の方法では時間の経過と共に黄色になりました。昔の方法で増量加工はしていませんので 増量が原因で黄変色することはないそうです。

加工によって生地が何割か重くなります。消費者にわかりやすい表示の義務はありません。


絹 100%

絹は酸素にさらされると黄色に変色する性質があります。どんなに 白さを保とうとしても限界があります。黄色くなるのはほんまもの絹の証拠です。
人間は外見や雰囲気に流されやすい生き物です。パッケージ包装とかタイトルで購入するのです。
絹製品 特に着物の世界では消費者にもわかる 正しい品質表示はありません。
唯一あるのは 繭から得られる糸つまり絹だけで生地を作れば 絹100% と表示します。
シルク SILK でも法的には問題ないですが 着物の生地では漢字を使っていると思います。
すごーく安いくて ほんとの絹なの?と思ってしまうものほど カタカナとかでかいてあるような気がします。


別織 本場別織 皇室献上品

上記の三つの言葉は胴裏のパッケージによく見られる表示ですが 特別品質の良い物をさしているわけではありません。着物の世界では 「お誂え」「別染め」という言葉をよく使います。既製品ではなく個々の人にあわせて仕立るのでお誂え。ある着物の色が気にいらない時は 白生地を好みの色に染めたりします。こうした行為に「別」という言葉をあてはめて「別誂え」とか「別染め」といいます。
本場は食べ物屋さんで本家とか元祖というのと同じようなもので、本家でも元祖でもお客様がおいしいとおもえばそれでいいのです。本場結城紬のような重要無形文化財もあります。それで胴裏に本場をつけるとなんとなく良物に思えるから売り手が利用しているのです。
皇室献上品を特別に思う必要はありません。献上品がいいかげんとはいいませんが 経験上 胴裏で皇室献上品だからすごく品質が良いと思ったことはありません。