丸染め 2

色無地 表側の仕立てについて

残念ながら 丸染めする前の寸法は不明です。大きなところを採寸すると 袖丈1尺4寸 身丈肩から右が4尺2分、左が3尺9寸7分 です。最初から左右の寸法が異なっていたのかどうかはわかりませんが、身丈が肩から4尺ほどということは身長150cmぐらいの人の身丈です。この着物は156cmの人の色無地でした。身丈の寸法はお店によっては異なりますが、通常156cmある人は肩から4尺1寸5分の長さにはすると思います。今は肩から4尺2寸あってもおかしくありません。この着物は一つ紋の色無地です。つまり礼装ですから、足袋を隠すように着るので、身丈は長く必要です。丸染めで身丈が短くなった可能性が高いです。

前頁の全形写真ではわかりませんが もっとアップにするとわかることがあります。「きせ」がほとんどなかったり、縫い目が見えている部分があるのです。

脇裾 縫い目がみえている

 

↑ 上の方にいくときせがないのがわかる左脇の裾部分です。
よく見ると縦のラインが左脇です。下の方は縫い目が見えませんが 上にいくと 縫い目が見えています。縫い目が見えるような仕立ては普通しません。

「きせ」 の巾を他の着物と比べてみる。

 

きせのある脇の部分

脇のきせなし

身丈や袖丈をどうやって伸ばしたのか?

着物の形のままに丈を伸ばすのは至難の技だと思います。ただ この色無地に関しては おそらくこのようにして丈を伸ばしたのだろうと推測しています。 染めた後に 袖と身頃ははずしたのではないかということです。少なくとも袖付の裏側をほどきました。
この着物の裏側の袖付は和裁士からみると異常な方法で袖付をしています。裏側の袖付の縫い目がででいるのです。何かをするためにほどいて いい加減な人が 裏側だから見えないからいいだろうと ザクザク縫ったという気がします。

袖付の裏側 縫い目がみえている

 

 

最初に説明したように 身丈が完全にもとのサイズになったのかどうか疑わしいです。袷の着物というのは 吊った状態の加減を見ます。表側にふくろがはいるような仕上がりにしてはいけないのです。同時に 裏側のゆるみにも頃合いというのがあります。前頁の全形写真ではわかりにくいのですが 裏側からの裾の写真を拡大して撮りました。

前身頃の裏側ですが 裏側にたくさんのゆるみがはいっているのです。後身頃はこれに比べると微々たるものです。仕立て屋は裏側には同じようにゆるみをいれます。これは いくらなんでも多すぎます。表と裏のつりあいが悪い時は「八掛けと胴裏のはぎの部分」で縫い直して調節します。着物の表と裏のつりあいがよくわかっていない人が仕上げたのです。

裏のゆるみがおおすぎる

丸染め 3

色無地 裏側

裏地の縦方向の縫い目がほとんど見えているような状態で 「きせ」がありません。縫い目がぼこぼこになっているのです。

八掛けの背中心

八掛けの背縫い部分 縫い目がみえて 生地が傷んでいるr
写真は縫い目が見えるように浮かしてとりましたが、普通は浮かしたとしても 縫い目は写せません。糸が二枚の生地を通っているのがわかりますが よく見ると 縫い目と縫い目の間の生地が傷んでいるのがわかります。織目が粗くなっています。

丸染していない別の着物の八掛けの背縫い部分


裏の衽付け線

衽つけ線ががたがたです。

下の写真の位置を示した図図の囲んでいる部分を拡大した写真です。私がわざと衽付け線をがたがたにして写真を撮っているのではありません。自然に床に置いたらこの状態なのです。↓

衽付け線


裾の背中心の部分

さらにひどいのは 裾の裏側の生地がやぶれているのも同然だということです。正常な場合と比べています。下にあるクリーム色のが普通の裾です。

背の裾縫い目が割れて 生地がひけている

横とじ糸のまわりの生地

後身頃が一番ひどくなっています。

横とじの糸が生地を傷めている

裾の部分がなぜこんなに傷むのか?
もともと八掛けの生地がそれほど丈夫ではない。この裾の部分というは 表生地、八掛け、芯生地と三つの異なる質の生地が重なっています。それに加えて 縫い糸が最低 二本は横に通っています。芯生地は木棉を使うのが一般的ですが 化繊を使っているのを見たこともあります。水につければ それぞれ縮み方が異なりますが 糸も正絹ですから 当然縮みます。糸の収縮率も異なります。裾は構造がほかより複雑であることと、 横とじが横と縦に伸ばす基点となり、生地を傷めてしまったのです。通常 何回も着物を着ると裾の部分が汚れて傷んできますが、ここまで横とじの周辺がいたむなら 裾そのものも擦り切れておかしくありません。


裏地の剣先部分

剣先部分を示した図

裏地の胴裏というのは 羽二重という生地が一番適しています。これが羽二重なのかどうかわかりません。 なぜ羽二重がいいかというと 生地の「くるい」つまり縮みが少ないからです。お店で高級裏絹とかいてあったりしても 鵜呑みにしてはいけません。水につけるとすごーく縮むものがあります。織る時に縦糸をひっぱって織るのです。絹糸はひっぱると伸びるのです。伸ばせばたくさん織れます。水につけると縮みます。女性の着物一枚分で売っている胴裏が 水につけたら 一枚分じゃなくなるぐらい縮むのです。

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裏側がこんなにぼこぼこだということは ぼこぼこにしないと 表側がかわりにぼこぼこになるということです。もし このような仕立てをしたら 許されないと思います。横と比べてください。

丸染め 4

丸染めをされた方は着物の知識がない方でした。お店の説明はメリットだけで 、デメリットの説明はなかったと聞いています。このことがあったので 私のホームぺージに掲載する許可をくださいました。この着物は丸染め前に二回 染めてから二回着たということです。丸染めをした直後から裾の部分はあのような状態だったと思いますが、証拠はありません。4回着ただけで、横とじ部分にあのような裂け目ができるのかと問われると ノーと答えます。
縮んだ生地をもとに戻すために 着物の形のまま無理やり伸ばす行為を 高度な技術といっていいのでしょうか?
ネットで検索している丸染めを行っている一つのお店が 「2006年から2007年ごろ」にはじまったようなことが掲載されています。昔から染替えるならば着物をほどいてから染める方法が常道です。着物のまま染めて問題がないのなら もっと昔からさかんに行われているはずです。広まらないということはそこに何らかの問題点があるからだと思います。水を使わない丸洗いはありますが、着物を染めるのに水を使わないわけにはいかないと思います。
物事には順序があって 省略して良いことと悪いことがあると思います。昔 着物の補正をしている人から  「着物は水につける瞬間が一番緊張する。」 と聞きました。
糸がほどけたり、切れたりしても 縫い直せばいいことです。生地が完全に破損されると再生不可能です。生地を織る時の打ち込みがあさいから 目われがおきるといいます。でも 何回も着れば 力のかかるところは破れてきます。補正で直すのは限度があるから 仕立て替え、つまり 前後の身頃を交換したりするのです。すべての部分が無理やりのばされたとなれば なおせるのかどうかもわかりません。この色無地はこのまま着る、これ以上は手をつけないと持ち主が決められましたので 着物をほどいた写真は撮れませんが 今までの写真だけで十分 生地が傷んだことはわかります。
多少、縫い目のツレや、縮みが出ます と説明しているお店 これが多少でしょうか?丸染めをされた方は 同じようなことがおきていませんか?おきていなければ 運よく もともと丈夫で 縮みの少ない生地だったのです。。
横とじの縫い方は普通の並縫いとは違います。横とじのない袖底の裏側にはなにもありません。丸染めをどうしてもしたかったら袷ではなく単衣の方がまだいいです。
この色無地は呉服屋さんを通して行ったものです。請け負った呉服屋さんに責任があります。この仕上がりを知っていて、だまって料金をもらったのか、見てもこの仕上がりが悪いとわからなかったのか、全く見ていないのかそれは不明ですが、どちらにしろ最低なお店だと思います。

少々何がおきてもいいから丸染めをしたいという方は丸染めする前に寸法を正確に測っておくことと 紹介したような部分を写真に撮っておくことをおすすめします。
たとえ 箪笥の肥やしになっていた着物でも 何十年たてば 自然にほこりにさらされます。私の経験でいいますと 長ーく着ていなかった袷の着物をほどくと袖の丸みの部分にや裾にほこりがたくさんあって、着物一枚ほどいたあとは、咳がでたり、鼻がこそばかったり、のどがいがいがするのです。めったにほどいて 洗ったりしない着物ですから、染め替えを期に、全部きれいにした方がいいのではないかと思います。着物をほどかない呉服屋さんには実感がないのでしょうね。そして この色無地は丸染めに適した着物かどうかを判断できる目を持たないとたいへんなことになるということの見本です。

染め替える時のアドバイス

染め替えが成功する秘訣をお教えします。期待しないことです。実は染め替える色の選択はとっても難しいことです。自分がどんな色が似合う人間なのかよくわかっていないと色の選択を間違えます。 見本帳を見ても その色があるとは限りません。希望の色に染めたとしても 頭の中の想像と現物とは違うことの方が多くあるのです。
染め替えれば生地は弱ります。漂白する方が弱りが大きいです。元の色を基準に、傷みにくて、気に入る色を探すのです。派手なのを地味にしたいとか、汚れがめだつので、目立たないようしたいとか染め替えの理由いろいろです。どんなにこの色にしたいと思っても、元の色とそのほかの生地の具合を考えれば、希望どおりの色というわけにはいきません。出来上がりの期待度は7割ぐらいにしておいた方がいいです。
染めてほしい色があったとしても 生地をもっていかないと 染められません。色鉛筆で紙に色をぬっても 染屋さんは困るのです。以前 紙に色をぬるといいましたが、呉服屋さんがそれでは受け付けてくれませんでした。それと 見本の色より少し薄い色とか濃い色とかいっても なかなかそのとおりにはなりません。色の本もあります。CMYBとか色の三属性の数値とかはありますが、実際に染める場合には 生地に染まった見本が一番いいみたいです。