色無地 裏側
裏地の縦方向の縫い目がほとんどが見えているような状態で 「きせ」がありません。縫い目がぼこぼこになっているのです。
八掛けの背中心
写真は縫い目が見えるように浮かしてとりましたが、普通は浮かしたとしても 縫い目は写せません。糸が二枚の生地を通っているのがわかりますが よく見ると 縫い目と縫い目の間の生地が傷んでいるのがわかります。織目が粗くなっています。
裏の衽付け線
衽付け線ががたがたです。
図の囲んでいる部分を拡大した写真です。私がわざと衽付け線をがたがたにして写真を撮っているのではありません。自然に床に置いたらこの状態なのです。↓
裾の背中心の部分
さらにひどいのは 裾の裏側の生地がやぶれているのも同然だということです。正常な場合と比べています。下にあるクリーム色のが普通の裾です。
横とじ糸のまわりの生地
後身頃が一番ひどくなっています。
裾の部分がなぜこんなに傷むのか?
もともと八掛けの生地がそれほど丈夫ではない。この裾の部分というは 表生地、八掛け、芯生地と三つの異なる質の生地が重なっています。それに加えて 縫い糸が最低 二本は横に通っています。芯生地は木綿を使うのが一般的ですが 化繊を使っているのを見たこともあります。水につければ それぞれの縮み方が異なりますが 糸も正絹ですから 当然縮みます。糸の収縮率も異なります。裾は構造がほかより複雑であることと、 横とじが横と縦に伸ばす基点となり、生地を傷めてしまったのです。通常 何回も着物を着ると裾の部分が汚れて傷んできますが、ここまで横とじの周辺がいたむなら 裾そのものも擦り切れておかしくありません。
裏地の剣先部分
裏地の胴裏というのは 羽二重という生地が一番適しています。これが羽二重なのかどうかわかりません。 なぜ羽二重がいいかというと 生地の「くるい」つまり縮みが少ないからです。お店で高級裏絹とかいてあったりしても 鵜呑みにしてはいけません。水につけるとたくさん縮むものがあります。織る時に縦糸をひっぱって織るのです。絹糸はひっぱると伸びるのです。伸ばせばたくさん織れます。水につけると縮みます。女性の着物一枚分で売っている胴裏が 水につけたら 一枚分じゃなくなるぐらい縮むのです。
裏側がこんなにぼこぼこだということは ぼこぼこにしないと 表側がかわりにぼこぼこになるということです。もし このような仕立てをしたら 許されないと思います。横と比べてください。