巾はあって、丈が足りない場合の説明
親などから譲られた着物は身丈が短くて着れない時があります。別布を継いだり、残り布があればその布を使って、身丈を伸ばして着ます。
男物は帯巾が女物より狭く、対丈で着ます。伸ばしたい長さにもよりますが、継いだ生地を見せないように仕立て直すのは難しいです。継いだ生地が見えないようにするならば 女物でも限度があります。
継ぐ前に最初に考える事
「生地を継ぐだけの価値がある着物かどうか見定める。」必要があると思います。特に遺贈では 思い入れも強く 着物として着たいと願う事はよくわかるのですが、元の持ち主の愛用品で、何回も着ていると生地は傷んでいます。とれないシミや色やけだけでなく、古着を通り越して「ぼろ」になっている事もあります。身銭を切る価値がある着物で仕立て直しをしてほしいと思います。
継ぐ生地について
理想は残り布を使うことです。残り布は行方不明になることが多いですが、残り布があるなら、その生地で継ぎます。残り布を着物と同時に洗い張りにだしてください。長く別々にしている事で、着物と残り布の色が違ったりします。
多くの場合、別布で継ぎます。できるだけ同じ種類の生地をつかいます。全く同じでなくても、紬には紬、ちりめんにはちりめん、お召にはお召と同じ種類の生地を使う方がいいです。
同種の生地を継ぐ理由は種類によって収縮率が違います。箪笥に保管しているだけでも 湿気を吸います。質の異なる生地を継ぐと仕立てた直後はよくても、長年たつとその影響が全くないとはいえません。また丸洗いや汗抜きをする場合、質の異なる生地が継いであると、普通の着物より作業が難しくなります。
呉服屋さんからすれば「儲かる仕事」ではありません。従って呉服屋さんの度量がないとできません。着物の生地は基本的に一枚分を仕入れます。継ぐ生地の丈と一枚分ではかなり違います。一枚の反物を継ぐ生地に使えば残った生地の方が多くなります。それを在庫としてかかえ、次の同じような依頼があるまで きれいに保管しておかないといけません。
着た時に見えない位置に継ぐとしても、全く違う色の布をいれるわけにはいきません。時には継いだ生地が見えるかもしれないからです。同じような色みに染める必要があります。実際に仕立て直しをする前に「元の着物の生地と継ぐ生地を十分吟味してください。」
「継ぐ位置」と「仕立て」と「着用」
今まで 何度か 別布や残り布をつかって身丈を伸ばしました。仕立てにはとても神経を使います。通常2日で縫える物3日かかったりします。その理由は普段しないことをするからというだけでなく、呉服屋さんからは「洗い張りされた着物」と「継ぐ生地」と「仕立て上がり寸法」が渡されるだけです。身丈を継ぐ仕立てで同じ物は一つとしてありません。見えない位置を考えるだけで、簡単に時間が過ぎます。
元の着物の丈、ほんとの着物の寸法、着物の着方で、継ぐ位置が変わります。
ほぼ 一発勝負の世界です。
袷か単衣か
絽や紗などの夏物の着物以外は袷に仕立て直した方がいいです。単衣の場合は継いだ部分の縫いこみをほつれてこないようにしなければなりません。袷の場合は裏生地があるのでその必要がありません。継ぐ生地は単衣より袷の方が少なくてすみます。