中級編3 紋

紋の歴史

◎ 紋の起源は 平安時代に公家の間で牛車の標識を付けた事がはじまりで, 家の紋として代々受け継ぐようになりました。
◎ 武家社会になると戦(いくさ)の敵味方を区別する為に紋をつけるようになります。
◎ 江戸時代には庶民にも広まります。町火消しや職人などが紋を付けた半纏(はんてん)を着ます。歌舞伎役者の紋が人気を呼んだりもしました。
◎ 古墳などの遺跡の出土品の中にはシンボルが描かれているのでもっと昔からあったと考えてもいいかもしれません。


紋の数と格

◎ 日本にはたくさんの氏名がありますが 家紋も何千種類あります。種類が多すぎて呉服屋さんによっては紋の係がいる店もあります。
◎ 着物では長着と羽織に紋を入れます。
◎ 紋の入れ方は決まっていて五つ紋が最上格です。次に 三つ紋 一つ紋 となります。
◎ 男性と女性では紋の大きさが異なります。女性の紋は5分(約2cm)の直径の丸に入る大きさ。男性の紋は1寸(約3.8cm)の直径の丸に入る大きさ。
◎ 女性の羽織は礼装として一つ紋か三つ紋を入れるのが一般的で 五つ紋にはあまりしないようです。紋の数と名前と位置


紋の風習

◎ 女性が結婚時に嫁入り仕度として喪服などの着物に紋をいれるとします。男の紋は家を表し 女の紋は血筋を表すとして母親の紋を入れる風習がある地域もあるようです。特に紋に頓着せず 家の紋もよくわからない人は桐の紋を入れます。誰が考えたのか?桐は誰でも使える紋ということになっています。家の紋を入れるのではなく おしゃれ紋といってオリジナルの紋を入れることもできます。紋章上絵師のお仕事をご覧になりたい方は「紋匠堀川」さんで詳しく紹介されています。


紋についてのちょっと話

◎ 誰もが自分の紋を知っているわけではありません。紋名を着物に染めるわけではないので 柄があっていればいいのですが、時にはやっかいなことがおきます。
◎ 家紋帳というのはいろいろあるのです。家紋帳によって柄が同じなのに紋名が異なっていたりします。全部が違うわけではなく何かが少し違うのです。このような事があるので必ず柄を確認する必要があります。もしかしたら印刷時の間違いかもしれませんが・・・。
◎ 紋に自信がないので墓石の紋を見てほしいといわれた事があります。残念ながら墓石の紋が正確とは限りません。大きな墓石なら彫りやすいかもれませんが・・・。
◎ 嫁入り道具に紋を入れるのは 離婚する時に女性の持ち物である事を証明するためでした。封建時代でも妻の持ち物をかってに夫が自由にすることは違法でした。夫婦は異なる紋でいいわけです。
◎ 呉服屋さんの持っている家紋帳はたくさんの紋が掲載されています。そこそこのお値段がするのですが、たまにお客様の方で調べたいとの理由で家紋帳を預けたりします。ところがいろいろしているうちにお客様に預けたままになってしまうこともあるそうです。家紋帳はただではありませんので、返してあげてください。

中級編3 紋の種類

表紋(日向紋) かげ紋(日かげ紋) 染め紋 切り付き紋(江戸付き紋) ぬい紋 絞り紋 などの種類があります。そのほか 特殊な紋として伊達紋 加賀紋 比翼紋などがあります。当サイトでは文様のコーナーで少ないですが、紋を紹介しています。

紋の位置と寸法

  • それぞれの紋の位置は着物の種類に関係なく同じです。長襦袢に紋を入れる人はいないと思いますが長着も羽織もコートも同じ位置です。
  • 子供物の一つ身、四つ身は大人より体格が小さくなるのでその分少し変わるだけです。
  • 肩山、袖山、掛け衿の下からの位置がそれそれ起点になります。
  • 紋の大きさは男女で違いはありますが、一枚の着物にすべて同じ大きさの紋をいれます。
  • 男物は背紋と袖紋の高さはほとんど同じ高さになります。
  • 女性の場合 出来上がり繰越巾によっては背紋が袖紋より下の位置にくる場合もあります。

大人の紋の位置

名称 本裁ち男女 四つ身 一つ身
背紋下がり 衿付より1寸5分(5.7センチ) 1寸3分 1寸
袖紋下がり 袖山より2寸(7.5センチ) 1寸7分 1寸5分
抱紋下がり 肩山より4寸(15センチ) 3寸5分 3寸

紋入れを入れる前に

  • 紋は一つ紋でも最低二つは入れます。背は縫い目があるので、右後身頃と左身頃に一つずつ入れる必要があります。(背縫いがない場合は一つになります。)
  • 紋章というお仕事をする人もいろいろです。昔はすべて手描きでした。最近は 型を使う方法が多いです。手描きと型では型の方が少し安くなります。型ではしていないという紋章業者さんもいらっしゃるかもしれません。
  • 一般的には呉服屋さんをとおして注文する事になります。

縫い紋の種類

  • 縫い紋にはステッチの違いで けし縫い すが縫い まつい縫い こま縫い さがら縫いがあります。
  • 業者さんによって名称に若干の違いもあるようです。
  • 縫い紋の色やステッチはご自身で希望をいうことができます。値段も違いがあります。
  • 一般的には地色と全く同じにすると紋があるかどうかわからないので同色にはしません。
  • 着物の地色より濃い色や反対色などいろいろです。
  • 最近はミシンの縫い紋が多くなってきました。ミシンの縫い紋はかたくなります。手縫いの方が生地になじんでいいのですが、料金の安いミシン縫いに技術がどんどん良くなっているのが現状です。
  • 危惧するのは 手縫いの紋の技術者がいなくなることです。

日向紋と陰紋

上記は三つとも「二引き」の紋です。向かって左から日向紋、日陰紋、縫い紋です。武士の第一正装は裃です。裃には日向紋をいれますが、武士が公務ではなく私的に外出する時には日陰紋を入れた羽織を着たりしました。このようにTPOに応じて紋の使い分けをしたのです。もちろん町人も同じです。紋の種類


石持(こくもち)について

石持ち黒留袖や喪服や黒紋付は紋をいれる所を白い丸にして地色を染めません。これを石持と呼びます。石持になっていない所に日向紋などをいれようとすると一度生地の地の色を白に変えなければなりませんがその時の技法を染め抜き紋といいます。濃い色や染色の方法などで上手く日向紋が入れられないときがあります。このような場合は縫い紋にする方が無難です。

中級編3 縫い紋

縫い紋 手縫いとミシンの違い

背縫いの縫い紋

縫い紋 五三の桐五三の桐で女物の色無地にあった背紋です。この紋は全形を刺繍しないで中心より少し多く刺繍しています。紋合わせをすれば半分は必要ないので全部縫わない時の方が多いです。男紋は直径1寸あります。5分が中心の位置になります。生地の端から3分が紋の中心になるのは女物と同じです。従って男性の背紋は全形を刺繍する事はできません。右の紋はよくみると大きさが違って左側の紋は少しいがんでいますがこうことはよくあることで和裁士はこれをうまくごまかして縫い合わせないといけません。また、この紋は3分5厘ぐらいが紋の中心になっています。

紋合わせをする前の紋縫い紋をほどいて紋のない着物にする。これは以外に危険なことだという事を覚えてください。そしてこの話は着物を手縫いにするかミシンにするかということにもつながります。
縫い紋はいれるよりもとる方がお金がかかります。

縫い紋の糸は生地のどこに入るのか?

平織の生地の織り方図です。縦糸と緯糸が交互に交差しています。織り方の基本中の基本です。この生地に縫い紋をいれるとします。ほんとうの着物の生地はもっと複雑な織り方ですが。イメージしやすいようにいたしました。

経糸と緯糸が交互にまじわる生地拡大図

上手な人は生地の縦糸と緯糸の間を通して縫い紋をいれます。もちろん紋の柄によっては必ずしも間にいれられない時もあります。手縫いの場合は生地を傷めない為にこのようにします。

上手に縫い紋が入っているときは経糸と緯糸の間に縫い紋の糸がはいっている

下手な人やミシンの場合は縦糸と緯糸の間に縫い紋の糸を入れるということができません。ミシンで紋をどのようにいれるのかは見たことはないのですが、コンピューターに柄を覚えさせると思います。たとえ 縫い紋を入れている時に人が見ていても直接針をもっているわけではないので 縦糸や緯糸に貫通させているかどうかわかりません。

ミシンや上手でない縫い紋の時は着jの糸に縫い紋の糸がからんでいる

縫い紋の糸を解く時に生地の縦糸や緯糸が傷つけられて 部分的に細かい糸が生地からでてきます。このようになるとなおません。

へたに縫い紋の糸をぬくと生地を傷つける

呉服屋さんに縫い紋をとる依頼をする場合

上のようなことになる可能性があるのでそのままにした方がいいといわれる時があります。
呉服屋さんが自分のところで売った時は縫い紋がミシンなのか手縫いなのかなどの情報があります。それで 縫い紋を入れてくれた職人さんにとるように依頼する。これが一番やり方としては良い方法です。
色無地などの前後を変える事ができる着物の時は仕立て直しで対応する方法があります。一度いれた縫い紋はとらない方が無難なのです。

女性が縫い紋を入れる時

女性の場合は結婚した時に着物をそろえる場合に夫の家紋、自身の家紋、だれでもいれられる女紋(一番多様される五三の桐)この三種類が考えられますが、万が一のことを考えれば夫の家紋を入れないほうがいいです。別れたのに着物は前夫の家紋なんていやでしょうから


着物を手縫いにするかミシンにするか

手縫いの方が仕立て代が高いです。安ければ誰もミシン縫いを頼みませんから。ミシンで着物を縫うのに一番改良したところは針だと思います。家に家庭用ミシンがある人は見てください。一番細い針は9号だと思います。工業用のミシンは8号が一番細いと思うのですが、その8号の針でも手縫いのようなわけにはいきません。
何十年も着物を大切にしたいならば 生地を傷つけない縫い方がいいのです。縫う時より ほどく時の方が問題です。糸を抜く時に簡単に抜けないならば余計に生地を傷つけます。 縫い紋はほとんどがミシンの縫い紋になっています。明らかに ミシンの縫い紋は生地になじみません。かたくなります。ミシンならば おおきさに違いがないと思うかもしれませんが 実際は違います。形や大きさが違う時があり、それをうまく繋ぎ合わせないといけないのです。手縫いよりかたい仕上げなので
ごまかして縫い合わせるのが難しい気がします。この時代の流れはとめようがないのでしょうが、手縫いの縫い紋の技術も受け継がれてほしいと願っています。